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政治家を巻き込むフィリップ・リオレ監督の新作

3月11日にフランスで公開されたフィリップ・リオレ監督の新作"WELCOME"が政治家たちを巻き込んだ論争の的となっています。

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恋人のいるロンドンに行くために冬の英仏海峡を泳いで渡ろうとするクルド人の青年と彼を助けようとする水泳コーチを描いた物語で、ヴァンサン・ランドン演じる主人公は違法滞在者を家に泊めた罪で罰せられる他、金銭を受け取って密告の手引きをする人たち、違法滞在者を蔑視する人たち、そして密告する人たちが登場します。

リオレ監督はこの作品にドキュメンタリー的に描かれる現実問題とフィクションとしての劇的描写をとても緻密にとけ込ませています。監督が得意とする微妙な感情を、主役のヴァンサン・ランドン、クルド人青年役のFirat Ayverdi、離婚協議中の妻役のオードレィ・ダナが「足りない」言葉と演技で素晴らしい表現を見せてくれます。

今回の論争の発端は、リオレ監督がこの公開に際するインタビューなどで不法滞在者の問題を第二次世界大戦中、占領下のフランスにおけるユダヤ人の状況と同じである、と発言したためです。この発言に対して移民省のエリック・ベッソン大臣が反発。それを受けてリオレ監督は日刊紙ル・モンドにベッソン大臣に宛てた手紙を公開しました。作品は全て現実に起こっていることを題材にし、また現実はフィクションを越えた状況であることをリオレ監督は手紙の中で記しています。ベッソン大臣は「素晴らしい作品であるが、この意見を撤回するように」と求めていますが、これに対して移民を援助する市民団体も監督を支持、また不法滞在者を援助したものに科される刑の廃止案を提案している野党の社会党の代議士たちは"WELCOME"の上映会を開催しました。

今年のベルリン映画祭パノラマ部門に出品され、「国際批評家連盟賞」(FIPRESCI賞)を受賞した"WELCOME"は公開第1週目を終えて27万人以上を動員するヒット、批評家、観客の評価も非常に高いものになっており、既に今年最も素晴らしいフランス映画の一本とも言われています。
by berceau-du-cinema | 2009-03-20 21:33 | CINEMA/FILM | Comments(0)
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