カンヌ映画祭絡みのニュースをまとめて紹介します。
*マルコ・ベッロキオの映画レッスン イタリア映画祭で来日を果たしたベロッキオ監督が、カンヌでも映画レッスンを行います。この映画祭からの招待に、ベロッキオ監督はイタリアの日刊紙コリエーレ・デラ・セーラのインタビューに、昨年コンペで上映されたにもかかわらず無冠で終わってしまった作品『勝利に!』に対する一種の"埋め合わせ"のようにとらえていると語り、今年の審査委員のメンバーに選ばれた主演女優のジョヴァンナ・メッツォジョルノを改めて賛辞を送っていました。 *監督週間出品作品がジャン・ヴィゴ賞に! 初長編作品で監督週間に選ばれたカテル・キレヴェレ監督の"Un poison violent"が、ジャン・ヴィゴ賞に選ばれました。"独立精神"と"作品の質"の高いフランス映画に与えられるジャン・ヴィゴ賞は、なぜか公開前の作品に贈られることが往々にあり、今作も5月14日にカンヌで正式上映される後は、まだフランス公開日は8月11日の予定とまだまだ先。また特別賞はやはりカンヌの招待上映で新作"Chantrapas"が上映されるオタール・イオセリアーニ監督の功績に与えられました。 *表現の自由か、歴史的事実が優先か? 公式コンペに選ばれているラシッド・ブシャール監督の"Hors la loi"に対して、フランスの右派政党UMPのリオネル・リュカ議員が抗議活動を起こしています。この作品では、ドイツ軍が降伏したのと同じ1945年5月8日に起きたセティフの虐殺の生存者である3人の兄弟が、フランスに渡りアルジェリア独立の為に闘争する物語を描いてますが、このセティフの虐殺の描写が事実に反しているという理由からです。リュカ議員は、この作品の脚本の話を聞いた昨年末より政府機関に調査を要請していました。ネット上では右翼に近いと目される"Vérité Histoire - Cannes 2010"(歴史の事実)というグループがカンヌでデモを開催して映画祭を"腐らせよう"と声をかけており、また作品の上映日である5月21日にアルジェリア戦争の被害者による式典がカンヌで開催されることが発表されています。この論争に対し、映画祭の芸術ディレクターであるティエリー・フレモー氏は「作品を外すようにという圧力は受けておらず、その予定もない」と答えており、フレデリック・ミッテラン文化大臣もまず作品を見てみることが大切だと側近に語っているそうです。 この抗議に対して、数人の映画監督や歴史家たちがこの作品の描写が歴史的事実とは違う部分があることを認めた上で、この作品はフィクションであり、コッポラ監督の『地獄の黙示録』を引き合いに出し、監督の仕事とは歴史家の仕事ではないとし、擁護をしています。確かにのロベルト・ベニーニ監督の『ライフ・イズ・ビューティフル』でも、歴史的事実との違いはそれほど非難されていなかったと記憶していますが… *ニキータ・ミハルコフ監督、同郷の監督に嫌われる… やはり公式コンペに「太陽に灼かれて2」が選ばれたニキータ・ミハルコフ監督に対し、「私たちは気に入らない」とタイトルのつけられた陳情書が、4月8日からネットなどで出回っています。ロシアの現政権ととても近い立場にあるニキータ・ミハルコフ監督は、12年前からロシア監督連合のトップを務めていますが、この陳情書によると、連合は全体主義的なシステムで運営されており、秘密裏で行われている会議で多くの決定がなされていると書かれています。ミハルコフ監督はこの連合以外にも多くの政府機関のメンバーになっており、ル・モンド紙の記事によると、この3月には政府から映画産業に対して与えられる援助金の80%、金額にして20億ルーブル(5100万ユーロ=60億円!)が彼の製作会社に与えられたそうです。また同監督が主導権を握っている経済・社会援助基金は「国益に一致する良質な作品」に与えられると明示されているそうです。この陳情書には、アレクサンドル・ソクーロフ、アレクセイ・ゲルマン、アレクセイ・ゲルマン・ジュニア、アンドレイ・ポポフらの映画監督から映画評論家のDaniil Dondourei、モスクワの映画美術館のディレクターであるNaoum Kleimanまで総勢100名近いの映画関係者の名前が連なっています。
by berceau-du-cinema
| 2010-05-06 18:26
| CINEMA/FESTIVAL
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