人気ブログランキング |

<   2011年 05月 ( 23 )   > この月の画像一覧

アドルファス・メカス 逝去

フランスには関係がないのですが…リトアニア人の実験映画作家のアドルファス・メカスが亡くなりました。心臓に疾患を持っていたそうです。85才でした。

兄のジョナス・メカスとアメリカに渡り、共にフィルム・カルチャー誌を発刊、『ハレルヤ・ザ・ヒルズ』などを発表。ジョナス・メカスパリには毎年1度は来てるのですが(大好きなブルゴーニュの白ワインを楽しんでいる!)、弟のアドルファスは何をしているのかな?と思っていたら、大学教授をしていると聞きました。2004年にリタイアしたそうですが、2008年にパリで『ハレルヤ・ザ・ヒルズ』がDVD発売された際に兄弟でパリにやって来てくれました。その時の感激のツーショット写真を…
b0163829_811958.jpg

ボケボケでごめんなさい。右端がジョナス・メカス、一人おいて(誰だか忘れてしまいました…)、アドルファス・メカス、そして左端が数々の実験映画や前衛映画を発売し続けているRE:VOIRのピップ。ある日、偶然すれ違った時に「すごく疲れている」と言ったら、そっとチョコレートをプレゼントしてくれた優しい人です。

ジョナス・メカスは6月中旬にもパリにやってきます。アドルファスの分も頑張って活動を続けて欲しいです。ご冥福をお祈り申し上げます。
b0163829_8112761.jpg

by berceau-du-cinema | 2011-05-31 23:59 | CINEMA/CELEBRITE | Comments(0)

FILMER LA MUSIQUE #5

パリで一番クールな映画祭、FILMER LA MUSIQUEがスタートしました。
b0163829_715533.jpg

5回めを迎える場所をサン・マルタン運河沿いのポワン・エフェメールから3区のゲイテ・リリックに引越。両方ともパリ市が運営しているのですが、小屋の雰囲気が全く違い、かなりラジカルな変化。ある日曜日にゲイテ・リリックに行った時に主催者の一人にばったり会ったことが。話していると毎週日曜日にできるだけ顔を出して、動員の様子を伺っているということでした。

さて今日のオープニングは、上映は予約制で入場無料。インスタレーションや有料&無料コンサートやDJ SETも。最初のカクテルではアサヒビールも出る大判振る舞い。会場はすごい人でした!
b0163829_7154929.jpg

b0163829_7155461.jpg

b0163829_716969.jpg

オープニング上映の目玉はアニエス・ベー製作、ハーモニー・コリン監督の”Umshini Wam”。ここ数年のうちで最も度肝を抜かれた南アフリカのラップグループDie Antwood出演の短編です。公式サイトもあるのですが、やっぱりスクリーンで見たかった。内容は期待通り。『ガンモ』と『トラッシュ・ハンパーズ』の中継点を行くような作品。でもモラル的な事は気にしないで下さい…
b0163829_7162431.jpg

さて気になるプログラムですが、日本でもこの夏に公開される『アップサイド・ダウン:クリエイションレコーズ・ストーリー』を筆頭に、ハリー・ニルソン(『真夜中のカーボーイ』の主題歌ですね)、ナンシー・シナトラ、フランク・ザッパ、モーターヘッド…まだ幼いビョークも出演した80年代初頭のレイキャビックのロック・フェスの映像も。イヴァン・ラグランジュ監督の”Tristan et Iseult”(ピエール・カルダン製作、ブリュノ・ニュイッテン撮影!)を10年ぶりに再見する予定です。
by berceau-du-cinema | 2011-05-31 07:13 | CINEMA/FESTIVAL | Comments(0)

サン・ジェルマン・デ・プレの映画館

パリには見たかった作品が公開された時にそこで上映をされていたら必ず選ぶ映画館が二つあります。一つは巨大スクリーンのある2区のMAX LINDER(最近では『ツリー・オブ・ライフ』を観賞)、もう一つが6区にあるサン・ジェルマン・デ・プレです。

なぜこの映画館?という理由は…ヌーヴェル・ヴァーグの香りがするから。メトロから出てきて教会とドゥ・マゴの間を通り、少し早めに着いたら隣のカフェのカウンターでエスプレッソを飲むのが習慣。この映画館で特別上映があると招待された監督や俳優もカフェで待機している姿を見たことが。例えばフィリップ・ガレル監督の『恋人たちの失われた革命』がそうでした。そしてちょっと古ぼけた映画館の中に入ると、上映室の壁にはヌーヴェル・ヴァーグの作品のポスターたちが並んでいました。

その映画館がしばらく工事で閉鎖していたので、ちょっと寂しく思っていたのですが、本日行ってみるとビックリ!雰囲気ががらっと変わっていました。ブルーを基調にお星様が一杯!私の大好きな色&モチーフ!階段の壁には映画の写真が埋め込まれています。どの作品の写真かわかりますか?一番奥は映画界の法王、ミシェル・ピコリです。
b0163829_5501596.jpg

床のカーペットも星模様!
b0163829_5501949.jpg

そして上映室に入ると、壁だけではなく椅子の背中にも星が輝いている!壁のロゴはここ数年パリで流行している、昔の看板の文字を集めて作ったもの。ヌーヴェル・ヴァーグのポスターたちは無くなってしまいましたが…上映室は上映前後も明るく電気がつくことはなく、いつもこの暗さで星が楽しめます。
b0163829_5505881.jpg

イメージとしては、前のヌーヴェル・ヴァーグのエスプリと18区にあるコクトーの内装の映画館STUDIO 28を足した感じでしょうか。後で知ったのですが、この映画館、エトワール(星という意味)・シネマというグループの一館でした。なるほど…
b0163829_550282.jpg

さて上映していた作品はカンヌで(わざと)見ていなかったウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』。ちょっといい加減にしてよ、的な内容で、「ゼルダ・フィッツジェラルドのイメージが違う…」などと思ってみていましたが、ブニュエル作品で一番好きな『皆殺しの天使』に関する部分では、怒り心頭に!ウディおじさん、度が過ぎます…しかしオーウェン・ウィルソンがウディ・アレンに見えて来る所だけがすごいと驚嘆。
by berceau-du-cinema | 2011-05-30 19:48 | CINEMA/ETC. | Comments(0)

私たちの好きな八月

現在、東京で開催されているEUフィルムデーズ2011。そこで私の大好きな作品"Aquele Querido Mês de Agosto"がポルトガル代表として日本初上映を果たしています!

この映画祭、どのような選考になっているのか全くわからず。今回のフランス代表は2編の短編作品ですし、数年前にはフランスでは今だ非公開、私も何度かの試写に行けずに未見のままの作品が上映されていました。この"Aquele Querido Mês de Agosto"も3年前の作品。何はともあれ、映画的高揚を味わった数少ないこの作品が日本で上映される事自体、夢のようにとても嬉しいです。
b0163829_723446.jpg


追記:この作品、2010年のポルトガル映画祭でも上映されていました。申し訳ありません!でも地方都市でもこの作品が見られるということは、とても幸福なことです。
by berceau-du-cinema | 2011-05-29 19:22 | CINEMA/FESTIVAL | Comments(0)

MARCHE DE LA POESIE

ミュージシャンでドキュメンタリー監督でもある友人が初めて詩集を出版。サイン会を行うので、と案内を受けて行ってみたのが…Marché de la Poésie(詩のマーケット)。
b0163829_10192269.jpg

会場の6区のサン・シュルピス広場にはすごい人!今年で29回を迎えるそうで、舞台や屋台もあります。すごく急いでいたので、じっくり見れなかったのですが、気になる本が続々…開催は月曜日までなので、また戻らないと!!
b0163829_10192287.jpg

友人の詩集は20年かけて書き綴られたもの。最近はフランスにおける詩のムーブメントの現状をドキュメンタリーにしました。彼は別のミュージシャンとのポエトリー・リーディングも行っています。
b0163829_1020316.jpg

b0163829_10203434.jpg

そう言えば…やはり詩人でミュージシャンのジル・スコット・ヘロンが亡くなりました…合掌を…。
by berceau-du-cinema | 2011-05-29 10:18 | BOOK | Comments(0)

レア・セイドゥXプラダ "CANDY"

プラダの新しい香水CANDYのイメージモデルにレア・セイドゥが選ばれました。
b0163829_18565926.jpg

その発表は昨年秋にあったのですが、やっとビジュアルがお目見えに。キャラメルとホワイト・ムスクの配合された甘い香りで、夏にぴったりとのこと。香水だけではなく、シャワージェル、ボディ・クリームなどの商品も発売されるそうです。彼女は前髪を揃えた赤い口紅の彼女はちょっとロリータ風ですね。
by berceau-du-cinema | 2011-05-28 18:56 | CINEMA/CELEBRITE | Comments(0)

オリヴィエ・アサヤスの新作、まもなく撮影スタート!

来年のカンヌに一番近い男?今年は審査委員を務めたオリヴィエ・アサヤス監督の新作”Après Mai(5月以降) ”のニュースです。

アサヤス監督自身が脚本を執筆した本作は、1968年の五月革命を経た1970年初頭の混沌とした時代を舞台に、自分の進む道を模索する17才の高校生ジルを中心にイギリスのカウンター・カルチャーに影響を受けたヨーロパの若者たちを描いたもの。配役の多くは実際の若者を選んでおり、監督自身が街頭でキャスティングしているとの情報も。製作費560万ユーロ、6月末から42日間かけてパリ近郊だけではなくイギリスやイタリアでも撮影されるこの作品、今回のカンヌでアメリカとドイツに配給権利が売れたそうです。

アサヤス監督は彼が信奉するアンテルナシオナル・シチュアシオニストのギー・ドゥボールの妻アリス・ドゥボールに捧げた”Une adolescence dans l'après-Mai : Lettre à Alice Debord(五月以降での思春期/アリス・ドゥボールへの手紙)”という本を2005年に上梓しています。この作品はこの本と対のような形になるのでしょうか。
b0163829_18404253.jpg

さて冒頭に「来年のカンヌに一番近い男」と書きましたが、実はもっと近い人が。今年の冬に撮影をした巨匠の新作が、来年のカンヌで何らかのオマージュを絡めて選出される話になっている、と製作筋から聞きました。もちろん来年の話をすると鬼が笑いますが…ヒントはマチュー・アマルリックが出ている作品です。
by berceau-du-cinema | 2011-05-27 18:37 | CINEMA/PROJET | Comments(0)

メランコリアにまつわるニュ―ス…

カンヌに行っている間、19日から20日にかけての未明にマリオン・コティヤールが出産していました。男の子で名前はマルセル。彼女が国際的にブレークするきっかけとなった『エディット・ピアフ 愛の讃歌』にも出て来る、ボクサーのマルセル・セルダンに因んでいるかどうかがフランスでは話題に。

さてやはり妊娠中のシャルロット・ゲンズブールですが、物議となってしまった”Melancholia”でカンヌの赤絨毯に登場した際には…シースルーのドレス!サンダルはバレンシアガだそうですが、ドレスは…特注?残念ながら騒ぎでこの夜のパーティは中止、シャルロットは翌日からのインタビューも受けずに帰ってしまったそうです。
b0163829_414261.jpg

さて、その”Melancholia”の記者会見。パルムドールに関する質問から始まる所が悲しい…問題発言の前後を見ていると、何となく状況が見えてきます。ジョン・ガリアーノの事件も、10年近く彼の元で働いていた友人から話を聞くと、「ああ、そうだったのか」と思いましたが。だからと言って、確かにどちらも擁護できる発言ではないのですが。しかしこの映像を見ていて、横にいるキルステンとシャルロットの反応にも釘付けになってしまった。キルステンはアメリカ人らしくすぐ反応。シャルロットはとりあえず笑顔は保ちながらも様子をうがかう感じ…

しかしこの事件、イラン政府がカンヌ映画祭側の対応を「ファシスト的」だと非難する声明を出したり(これは別件が原因だ、絶対…)、今まで殆どの同監督の作品をファイナンスしてきた仏独テレビ局のアルテのドイツ側が今後の協力体制を行わない(フランス側は検討中)と発表したりと、まだまだ尾ひれがつきそうです。
by berceau-du-cinema | 2011-05-27 04:03 | CINEMA/CELEBRITE | Comments(0)

カンヌ映画祭2011:私的な考察について注釈

昨日アップした内容にちょっと反響があったようなので、ここで少し注釈を入れさせて頂きます。

ワールドセールスの会社と映画祭の関係は今年に始まったことではなく、かなり以前からあることです。それは「この作品をコンペに渡すから、開幕上映もウチから」みたいな交渉であったり、ちょっとイレギュラーな方法から選考にアプローチするなど、その形も様々。しかしいずれにせよ、その作品のクオリティがその部門に適切なものであれば最終的に観る側は満足できると思います。

今回、タイトルをあげた”The Artist"は私は個人的に退屈しましたが、決してすごく悪い作品だとは思わず欠点のようなものも見当たらないので、「ウェル・メイドで娯楽作品」という表現をしました。実際に私が作品を見たプレスと映画関係者用の上映では大きな拍手も上がっていました。ただ私はこの作品はやっぱり「招待上映」がふさわしいと思うのです。ちなみにこの作品、カンヌの公式カタログには「招待上映」のまま。間に合わなかったのね(笑)。

最後にちょっといい話を。

今回のカンヌで最後になって緊急に組み込まれたジャファール・パナヒ監督とモハメッド・ラスーロフ監督の新作ですが、パリのシネマテーク・フランセーズのセルジュ・トゥビアナ館長の元にイラン人の友人がお菓子の箱の中にUSBキーを入れて届けたそうです。この過酷な状況の中でも映画製作を続ける両監督、そしてこのイラン人の友人の方の勇気にも是非敬意を表したいと思います。フランスは2作品とも配給が決定しました。日本でも少なくとも映画祭などで上映して頂ければ…
by berceau-du-cinema | 2011-05-25 06:37 | CINEMA/FESTIVAL | Comments(0)

カンヌ映画祭2011:私的な考察

今年のカンヌ映画祭では色々と考える事がありました。ちょっと過激な(?)内容ですが、個人として見聞きし、経験し、感じたことを敢えて書いてみたいと思います。

色々と考え始めたスタートはセレクションの発表があった際です。特にある視点部門と監督週間部門の作品リストを見た時に、出品の可能性が高かった作品が何本か見当たりませんでした。作品のクオリティが思ったよりも良くなかったこともあるかも知れません。(カンヌに入らなかったある女性監督の作品のポスプロに関わっていた友人は、そのクオリティにクビをかしげていましたし。)しかしその直後に、8月頭に開催されるロカルノ映画祭のディレクター、オリヴィエ・ペールに会う機会があり、「少し横取りしたでしょう?」と茶化した所、「少しじゃなくてたくさん」という返事が返ってきました。

映画祭間で作品を取り合うのは当たり前の行為であり、セレクション側はぎりぎりまで情報がリークされないようにし、それを事前に暴露してしまうのは作品の宣伝をできる限り早くしたい製作側、配給側、海外セールス側のルートです。同じ映画祭の中でもこの「取り合い」は熾烈で、カンヌで言うとある視点部門と監督週間部門間のバトルが有名です。しかし今年はここに批評家週間部門が参戦しました。

批評家週間部門は実を言うと「本当に批評家が選んでいるのか?」と思うぐらい、緩い作品が多い部門でした。1作目もしくは2作目の新人監督が対象というハンデもあることながら、やはり選びたい作品を他の部門に取られてしまうことが多かったはずです。しかし去年からカイエ・デュ・シネマ誌の元編集長シャルル・テッソン氏がメンバーに加わり、今年のセレクションは高い評価を受けました。テッソン氏は来年から同部門のトップに就任することが映画祭開催直前に発表されています。他のメンバーとは世代が一回り違うテッソン氏に牽引されるというのは、ある意味問題かと思いますが(現トップは来年からメキシコのフランス大使館の文化部門に就任決定だそうです。批評家じゃなかったのか???)、やはりここではテッソン氏の知名度と人脈が重要な役割をしたのは否めないと思います。前述のオリヴィエ・ペール氏も元シネマテークのプログラム担当、レザンロッキュプティブル誌の批評も担当するなど、既に業界での知名度は高く、就任直後から彼のセレクションに対する信頼度の高さはある種、盲目的とも言えるものでした。オリヴィエ・ペール氏は監督週間部門に自身が得意するジャンル映画(『ウルフクリーク 猟奇殺人谷』)やコメディ作品(グレッグ・アラキ監督の"Smiley Face")も組み込み、周りの大反対を押し切っても独断で危険を冒す(『大日本人』)「強さ」も持っていました。

実際に監督週間のオープニングを飾るはずであったヴァレリー・ドンゼッリ監督の”La guerre est déclarée”は、最終的に批評家週間の開幕上映となり、招待状がなければ入場不可能になるほどの人気を集めました。またマーケット上映もバイヤーですら入場できないほどごった返した50周年記念上映の"My Little Princess"(エヴァ・イオネスコ監督)もテッソン氏の尽力があったと聞きます。2作とも作家性よりも商業的な要素の強い作品ですが、映画祭には上映された作品の国際的なキャリアを見送る使命もあります。(オリヴィエ・ペール氏に観賞した作品の感想を述べると、必ずと言いほど「どこの国で配給がついたか」を口にしていました。)

同部門のフレデリック・ボワイエ氏はディレクター職の最終選考時に「オリヴィエ・ペールの路線を継承する」と明言したそうです(同じく最終選考に残った人から聞いた話)。しかし「継承する」ということは口に出すほど容易いことではなく、今年の例であげるとテシネ監督の"Impardonnables"は、コッポラ監督の "Tetro"ではなかった訳です。もちろんペール氏のセレクションには「これはちょっと…」という作品もあり、今年の監督週間部門にも素晴らしい作品はあったのですが、全体を通すとあまりにも「普通の出来」の作品が多く、どこか1本調子のセレクションになってしまった感が。保守に走ってしまったのでしょうか。

毎回満席でごった返していた監督週間部門が、チケットを購入する一般客が大挙押し寄せる第1週めの週末を境に空席が目立ち始め、特に最初(9時)と最終(22時)の回は悲しいほど観客がいませんでした。例年の、そして前半の「並んでも入れない」という噂が影響したのかも知れません。それと比例するように批評家週間は連日の大盛況(この部門はメイン会場の上映室が小さすぎる、という問題を抱えています)。翌日朝8時半に本会場で行われる再上映でも同じ時間にコンペ作品の上映があるにも関わらず、まずまず人が入っていました。来年に向け、批評家週間部門は上映室のキャパの問題、監督週間部門は選考についてのてこ入れがされるのではないでしょうか。

ル・モンド誌の映画欄の主筆、ジャック・マンデルバウムもこの件についてレポートしてます。最後にある監督週間部門の存在に異議を申し立てるティエリー・フレモー氏の言葉は、別運営の同部門に対してかなり失礼だとは思いますが。

そのティエリー・フレモー氏がトップを務めるコンペ部門で選考に対する不信感が爆発しました。コンペに選ばれた2本のフランス映画が同じワールドセールス会社の作品で、しかも”The Artist"に関しては最初の発表では招待上映に組み込まれていたからです。

フレモー氏は記者会見で「新たにコンペに加わる作品はない」と明言し、つまり”The Artist"はコンペよりも招待上映にふさわしい作品として選ばれていたにも関わらず、映画祭開催1週間前に突然のコンペ入り、しかも何の説明もなし。ぎりぎりになって製作が間に合って選出される例は今までもありましたが、明らかにこの作品については違う流れがあったとしか思えないのです。作品はウェル・メイドで娯楽作品として楽しんでみることのできる観客もいるでしょう。しかし無声映画へのオマージュとしてストーリー、演出、美術、衣装…全てにおいての再構築でしかなく、音の使い方以外は映画作家としてのオリジナリティが完全に欠如。そしてその対極を行く”Polisse”は、偽のリアリズムを強引に見せ、少年課という舞台設定も素晴らしい俳優陣の演技も全て自我の中に取り込んでしまう作品。その監督(と呼ぶのも嫌悪感が走る)の授賞式の「パフォーマンス」には、映画、他の映画人への敬意を全く持ち合わせていないことを露呈しました。

映画業界では選出作品が発表された際に、「どのワールドセールス会社の作品が多いか」を必ず話題にします。作品がカンヌに選ばれる=ビジネスに繋がる、という計算があるからこそ、作品の仲買人であるワールドセールス側は激しい売り込みをし、もちろん選出する側もいい作品を他の映画祭/部門には取られたくはなく、ここに政治的な関係ができあがってしまうのです。ちなみに前述の会社の重要人物はフレモー氏と共通の趣味を持っており、個人的な仲であることは業界内では知られています。監督週間にはこの会社の作品は1作もなく、批評家週間に流れた前述のヴァレリー・ドンゼッリ監督の”La guerre est déclarée”はこの会社が担当しています。(監督週間部門のセレクションメンバーの友人はこの二人の監督週間部門潰しに言及していました…)この会社は以前にベルリン映画祭もボイコットしています。この会社のラインナップはかなり強力なので他にもコンペ作品あり、そして他にもカンヌに強いワールドセールスの会社は幾つかあります。映画祭の選出作品をワールドセールスの会社がコントロールする時代なのでしょうか。

しかし一度選ばれた映画は、数名の審査委員によってジャッジされ、最終的な受賞結果へと流れて行きます。今回の受賞結果には審査委員長を始めとするアメリカ映画への嗜好だけではなく、ラース・フォン・トリアー監督の問題発言(これに関しては日本でもニュースになっていますが、映画評論家の齋藤敦子氏のレポートを是非。)も影響を及ぼしていると言われています。

身体、特に眼による演技によって俳優として最高峰にいると言っても過言ではない素晴らしいミシェル・ピコリがなぜ賞を取れなかったのか、娼婦の世界を普遍的なアプローチで提示しながらも自らの美学を突き通したボネロへの評価の低さ、舞台をヘルシンキからフランス北部に移しながらもあくまでもカウリスマキ作品として昇華させる、人間愛に満ちた”Le Havre”がなぜどの賞にも絡まなかったのか…
by berceau-du-cinema | 2011-05-24 23:28 | CINEMA/FESTIVAL | Comments(2)