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ロッテルダム映画祭2012/2

ロッテルダム映画祭の醍醐味の一つは、世界の映画祭で注目された作品が集められていることでしょう。商業的な作品だけではなく、この映画祭の「目」というフィルターが通された興味深い作品に出会うことができます。

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"Verano" ホセ・ルイス・トレス・レイヴァ監督(チリ)
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昨年のヴェネチア映画祭オリゾッティ部門に出品。今回のロッテルダム映画祭で一番感動した作品です。愛と孤独を抱えた様々な人たちの姿が紡がれて行くのですが、最初のショットからそれが確信に変わるほど全編から愛が満ち溢れ、心を震わせる瞬間たちが次々と現れては消えて行きます。同監督の作品は初見ですが、これからの活躍が本当に楽しみ。この作品はどうしても日本に紹介したい!
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またトレス・レイヴァ監督は映画祭側の依頼された短編"Copia imperfecta"も監督。同郷の故ラウル・ルイス監督のオマージュを捧げています。

「山のあなた」Aya Koretzky監督(ポルトガル)
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日本人の父親とベルギー人の母親を持つAya Koretzky監督が、「静かで軍基地や原発のない場所で暮らしたい」と願いポルトガルに渡った家族の姿を、記憶を辿りながら見つめる美しい作品。ポルトガルの映画祭Doclisboaで評価を受けています。監督は現在パリ在住、次回作を準備中。楽しみです。
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"Two years at Sea" ベン・リバース監督(イギリス)
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ヴェネツィアのFIPRESCI賞受賞作品。山奥で自給自足の生活を送る老人の四季を、16mmのモノクロ映像で捉えた作品。映画が進む中、この老人の世界にあるファンタジーが訪れ、そこから現実と幻想を凌駕するポエジーが立ち現れ、不思議な世界に誘われるような錯覚が…この素晴らしい映画的体験にずっと映像の中に浸っていたいと感じる作品。ベン・リバース監督作品は恥ずかしながら初見。今までの作品も見てみたいと思いました。日本でも紹介されているので、この作品も近い内に上映されるのでは?
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"Le Reste du monde" ダミアン・オドゥール監督(フランス)
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作品毎に全くスタイルの違うものを見せてくる鬼才ダミアン・オドゥールの新作は、女性たちを主役にした作品の製作が頓挫したことの反動から作られたそうですが、パートナーであるマリー=イヴさんが主役を演じるFilm intimiste(親密な映画)で、恋人の突然の死を乗り越えて行く女性の姿がえがかれていますが、彼女がとても美しく、ミューズの映画の系列に数えられると思います。いつも幾つもの企画を同時進行している監督は自信作という次作が既に完成しているそうです。どの映画祭で見る事ができるのか、今から楽しみ。またマリー=イヴさんは映画の中に出て来るように聾唖学校の教師だったのですが、これを機に監督に転身、聾唖の子供たちをテーマにしたドキュメンタリー作品を製作しているそうです。

"Historia que so existem quado lembradas" Júlia Murat監督(アルゼンチン)

ヴェネツィア、トロント、サン・セバスチャンという名だたる映画祭に出品された作品。過疎化が進み、多くの住民が老人という村で亡くなった夫の想い出の中に生きる年老いた女性と、そこに突然ふらりと現れる娘を軸に物語。老いというテーマを扱いながらも、侵入者である娘と村人たちとの間に生まれる関係が浸透性を持っていて心に響きます。これは日本に紹介されてもおかしくはない作品、と思うのですが。

"Small Roads" ジェームス・ベニング監督(アメリカ)

ランドスケープ・アーティストのベニング監督の今作のテーマは「道路/車」。映像上でもそうですが、人間の作り出した物の暴力性が音の世界にも強く響き綿立っていることに深い印象を覚えたのですが、実は撮影されたそのままに見えるそれぞれの風景が、よりリアル&ナチュラルに見えるよう、サウンドも含めコラージュの賜物であることを後から知りました。

"Buenas noches, Espana" ラヤ・マーティン監督(フィリピン)
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これまでに見たラヤ・マーティン作品とはちょっと違う、愛嬌/遊び心がある作品。『シルビアのいる街で』のピラール・ロペス・デ・アジャラ さんが出演!

「ひかりのおと」山崎樹一郎監督(日本)

東京国際映画祭に出品。真摯に丁寧に作られた事が作品からヒシヒシと伝わり、とても感動しました。特に主人公を取り巻く家、土地といった空間の捉え方が素晴らしい。そして、あの力強いエンドロール。このラストが作品に多重な意味を与えていると感じました。

特集上映 "The Mouth of Garbage"

残念ながら1作しか見れず。ブラジルのサン・パウロでこの「ごみの口」という名前で呼ばれた地域で1960-70年代に低予算で製作されたFilm subversif(破壊映画)でポルノやスヌッフなどジャンルは様々。何本か見た人に聞いたとこと、若者が多く詰めかけた会場はいつも満席で非常に大受けだったとのこと。パリのシネマテークのCINEMA BISと同じ盛り上がり?

最後に…夜に余興で見た伊映画"La leggenda di Kaspar Hauser"はヴィンセント・ギャロ主演映画!しかし内容は…余興以下(笑)。ギャロは"Oh, yeah"と叫んでいるだけだし。カモシカのようなエリザ・セドナウィだけを頼りに見る。音楽のVitalicはイタリアでは有名だそう。ダフトパンクとかクオンタン・デュピューみたいな事がしたいんだな…と。
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コンペも含めて、結果として南米映画を多く見ることになりました。自分の好みもあるのかも知れませんが、やはり今、一番面白くもあり、そして心に響く作品を作る若手が多く出てきているのかな、と。
by berceau-du-cinema | 2012-02-06 11:05 | CINEMA/FESTIVAL | Comments(0)

ロッテルダム映画祭2012/1

ロッテルダム映画祭の報告を…と思っているうちに、公式コンペのタイガーアワードの受賞作品が発表となってしまいました…それでもやっぱり!と一念発起しての報告です。

滞在は5泊6日。毎日約6本、全部で30本(うち短編2本)を観賞しました。やはり毎年参加しているカンヌ映画祭ではフランス映画を優先し、その他、マイナーながらも話題作、フランスでの公開が決まっていない作品などを中心に鑑賞していますが、ロッテルダム監督の魅力は新しい才能の発掘と世界の映画祭で発表された話題作をまとめて見る事ができること。なので新人監督(第1作目、第2作目)の作品を対象にしたコンペ部門を中心に、気になっていた作品でプログラムを組んで行きました。

コンペ作品は15本中13本を観賞。その中で良かった作品は以下の通り。

"De jueves a domingo(Thursday Till Sunday)"
Dominga Sotomayor監督(チリ/オランダ合作)
木曜日から日曜日まで週末旅行に出かける家族のロードムービー。何かを予感させる最初のシークエンスから一転、ありきたりな旅行の描写が続くのですが、常にこの家族が何かを抱えている事が多感な時期に入る少女の眼から少しずつ浮かび上がって行きます。非常にシンプルな話ですが、それに引きつけられていくのはその巧みな構成と美しいカメラ、そして編集の上手さにもよるのかもしれません。
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"Gui lai de ren (Return to Burma)"
Midi Z監督(ミャンマー/台湾合作)
12年ぶりに台湾から帰郷した男性の目を通し、普通の人々の姿や言葉からいつまでも変わらない家族の姿や現在の祖国の現状を浮き彫りにする作品。監督の実体験を元にしていますが、スタイルはとてもシンプル、しかしそこからでも多くを語る事ができると教えてくれる作品でした。
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"Sin maysar fon tok ma proi proi (In April The Following Year, There Was a Fire)"
Wichaon Somumjarn監督(タイ)
ロッテルダム映画祭のコンペに選ばれるタイ映画はいつも気に入るのですが、今作も然り。結婚式の為に里帰りした青年を軸に市井の人々の姿を描くのは"Return to Burma"に近いのですが、この作品にはもう一歩踏み込んだ大胆さも。『ブンミおじさん』への言及からスタートする冒頭から緩やかに作品は流れて行きますが、柔らかいタイ語の音色を聞いているだけで幸せになれてしまう優しさに満ちています。途中、タイ の政治的混乱を伝えるニュースが流れ、そして主人公は喧噪のバンコクに戻るのですが、それらも決してマイナスだけのイメージだけではなく、祖国への愛が根底に溢れています。そして特筆はエンドロールで流れる音楽。少し時代遅れのようなエレクトロ・ミュージックにも郷愁が感じられる、至福の1本。
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"Jidan he shitou (Egg and Stone)"
Huang Ji 監督(中国)
中国ではまだ珍しい女性監督による初長編作品。親戚の家に預けられた少女の物語で監督自身の話がベースですが、安易な説明に頼らないスタイルで物語は進んで行き、時に繊細さを要する描写があるのですが、それが女性監督らしい感性を通して、とてもよく 描かれています。製作、撮影、編集を担当した大塚竜治さんは実生活でのパートナー。監督が新しい命を宿しているとの事で上映後のQ&Aは暖かいものとなりました。。
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最優秀作品に与えられるタイガーアワードは3本選ばれるのですが、既報の通り、"De jueves a domingo(Thursday Till Sunday)" と"Jidan he shitou (Egg and Stone)"が受賞したので、とても嬉しく感じました。しかし残りのもう1本、セルビア映画の"Klip(Clip)"が全くダメでした…そのハードな内容で話題にはなっていたのですが、映画的な魅力が全くない、監督の自己満足的な作品にしか見えず。公式サイトに書かれているこの作品が選ばれた理由も全く説得力がなく…でした。

次回はその他に心に残った作品を。
by berceau-du-cinema | 2012-02-06 09:11 | CINEMA/FESTIVAL | Comments(0)